前回は、企業負担としての法定福利費と法定外福利費の動きを見てきたが、今回は、従業員側での福利厚生へのニーズはどうのようになっているのだろうか。

この従業員ニーズを知るひとつの手立てとして着目したいのはカフェテリアプランである。同プランは2016年度の「福利厚生費調査」では普及率で15.2%、「5000人以上」規模の大企業層では45.6%にまで広がっている。

周知のとおり同プランは企業側から定期的に提供されるポイントというある種の疑似通貨を得て、メニューという制約された市場内で従業員が自由な選択、サービス購買ができる。この自由な選択行動のなかに彼らのニーズが現れていると推測される。もちろん、このニーズはプラン外の通常の福利厚生給付との関係性のなかで発露されるニーズである。

[図4]は、与えられたポイントをどのようなメニューを選択したか、ポイント価格ベースで構成比をみたものである。参考のために通常の法定外福利費の構成比とも比較できるように処理している(左側:法定外福利費、一部、企業負担のみの費目を除き再集計)

ポイント消化率が最も高いメニューは、やはり「文化・体育・レク」で26.8%である。
全体の4分の1を越えている。従業員たちはよく楽しんでいるのである。

次いで高いものとしては「財産形成(17.2%)」「給食(15.8%)」「保険(11.5%)」と続く。「育児」についても5.3%と一定の割合を占めている。これが従業員たちが自発的に選択した結果であり、彼らのニーズの現れであろう。

 

 左側の企業負担の法定外福利費の構成比と比べると、その違いは明らかである。
法定外福利費では減少してきたとはいえ周知のとおり、「住宅」がほぼ半分を占めた硬直的な状態が長年続いており、従業員の選択行動とは差異が大きい。
この企業と従業員との選択の差異はなかなか意味深いものといえる。つまり、企業が制度を導入・提供し定着やモチベーション、採用力といった経営的効果を期待するなかでの配分と、従業員が自らの生活設計や生活満足を得たいという意識によって選択された結果としての配分が大きく異なることは当然であるわけだが、一方でこの差異は経営的効果と生活満足という二軸をいかにバランスを取るかが問われることを示唆している。

従業員の要望に一方的に従属して配分することがベストでないことは明らかであるが、経営的効果というものが従業員の満足や安心感といったものを基盤として成立することも間違いないのである。

 

図4 カフェテリアプランでのポイント消化実態(2016年度)

 

 

この従業員ニーズを示すカフェテリアプラン内での配分について近年の推移をみたものが[図5]である。当調査で初めてカフェテリアプランに関する計測を行ったのは、2002年度からである。その当時の配分比と直近の2018年度の配分比との差分(ポイント)を析出してみた。

この間に大きく構成比を伸ばしたのは、「文化・体育・レク」分野の中の「活動」である。24.8ポイントと大きく増えた。従業員たちがレク関連には強い関心があることは間違いない。他には「保険(+5.3p)」「住宅関連(+5.3p)(中分類)」などが増えている。

一方、構成比で大きく後退したものとしては「給食(食事手当等)」で、当初より22.1ポイントも減らしている。これはわが国のカフェテリアプランの初期の導入時期には、伝統的に大きな費用負担となっていた食券制度からの移管が大企業層などでなされたためであろう。筆者も何社かのケースをヒアリングさせていただいた記憶がある。

製造業等で慣習化していた昼食時での食券給付が思い負担であったが、あまり経営的効果に寄与していないのではないか、という担当者がカフェテリアプランへの移行によって漸進的にその負担を軽減しようとなされていた。

一方で近年は健康経営が大いに推進される中で、給食施設は“食による健康づくり”の場として、ヘルシーメニューの開発・導入や健康セミナーの開催、従業員ICカードなどで管理しながら健康予防アドバイスを行うといったシステムも拡がってきた。こうした中で、カフェテリアポイントの利用とは徐々に切り離されてきたのである。「食が大事」という発想もある意味では貧しい昭和初期の時代であるだめに企業支援か始まった経緯なども併せて考えると当然の動きなのであろう。

また、このカフェテリアプランでのポイント消化において「社宅・寮入居費補助」「持ち家補助」といった住宅関連も増えている。法定外福利費としては減少させるなかで、カフェテリアプランで負担に移行させた結果であろう。

図5 ポイント使用額構成比の変動幅(ポイント)(2002年度2016年度での比較)

 

 

 さて、法定外福利費の動きを巡って、その外部的な影響要因と内部構造的な要因をあわせて概観してみた。

外部要因的には、まだ法定外福利費を拡大できる余地はあるのではないかと推察できた。法定福利費、退職給付の今後の動き次第だが、三費用のピーク時の負担額からすると、企業には負担余力があるものと考えられる。

一方で法定外福利費の内部で様々な個別制度の動きにはこれからも注目したい。

育児に引っ張られる形で拡大傾向をみせる分野が徐々に明らかとなってきた。健康経営の雨後にあわせた予防的な「健康」、ストレス対策や早期離職問題対策として期待される「文・体・レク」、高まる老後不安への生活設計対策としての自助努力として「資産形成」等々である。
そしてまだ数値の反応としては現れていないが、育児に替わって深刻な両立問題となることが確実視される「老親介護支援」もある。

法定外福利費の水準そのものに最適額、目的額が存在するわけではないが、これらの重要性を増している分野への積極的な福利厚生支援が必要となってくるのではないだろうか。

 

<近年の福利厚生費の動向①はこちら>