東京警察病院にて初期臨床研修を修了、以降 東京医科大学病院にて研修アレルギー疾患対応や有害業務リスク管理等、
産業衛生を皮膚科専門医の立場からもサポートする。
下方 征

 「人生は決断の連続である」と言われるように、私たちは毎日多くの決断をして生きています。

 例えば昨日の昼食や、今朝の通勤経路、またあなたの結婚相手まで全てがあなたの決断の結果です。私たちは私生活だけではなく、もちろん職場においても多くの決断をしなくてはなりません。産業衛生を業務とする方は、リスク管理のために重大な決断を要求されることも多いでしょう。

 では我々の脳が下している「決断」というものは、どの程度の信頼性や根拠があるのでしょうか。是非以下の問題に挑戦してみてください。これはアメリカのテレビ番組で実際に出された問題ですが、あなたがこれまで信頼してきた「自分の決断」を信用できなくなるかもしれません。


 問題

 あなたの前に3つのドアがあり、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろにはヤギ(はずれを意味する)がいます。もちろん、どのドアの後ろに何がいるか司会者以外にはわかりません。

 あなたは1つだけドアを選ぶことができ、新車の隠れたドアを当てると新車がもらえます。さあ、ではドアを1つ選んでください。(実際に選んでください)

 するとその後、司会者は残りの2つのドアのうちハズレのドアを1つだけ開けてヤギを見せることになっています。ということは「あなたが最初に選んだドア」もしくは「あなたが選ばなかったドアでまだ開いてない方のドア」のどちらかが当たりで、新車が隠れていることになります。

 ここであなたは最初に選んだドアから、もうひとつ残っている開けられていないドアに今なら変更してもよいと司会者に言われます。あなたはドアを変更しますか?

 さあ、決断してください。

 あなたは、最初に選んだドアから変更しますか?それとも、変更せずに初めに選んだドアを選びますか?実際に新車を当てるつもりで真剣に考えてください。


 決断いただけたでしょうか。ここからは解説です。

 多くの方は、ドアを変更してもしなくても当たる確率は2分の1で変わらない、だからドアは変更しない、と考えるようです。

 しかし、結論を申し上げると、正解は『ドアを変更する』です。なぜなら、ドアを変更した場合には新車を当てる確率が2倍になるからです。これはモンティ・ホール問題と呼ばれ、当時数学者の間でも大きな論争となりました。詳細な説明は割愛しますが、ドアを変更しなければ当たる確率は3分の1で、ドアを変更すれば当たる確率は3分の2となり2倍になるのです。 (納得できない方はGoogleで「モンティ・ホール問題」と検索してみてください。詳細な解説が多数見られます。)

 我々の脳が下した決断は、過去の経験則や記憶、個人的な主観により判断されたもので、常に正しいとは限りません。また人間は変化を嫌う生き物ですので、一度下した決断を変更することを極端に嫌がります。この2つの要因により上記のモンティ・ホール問題では、「ドアを変更しない」という誤った回答が続出することになります。

 近年、産業構造の変化や高齢化の進展により、労働者をとりまく環境も大きく変容しています。雇用形態の変化、就労に対する価値観の多様化により、会社の健康管理業務も多様なリスクへの対応が求められます。

 特に今年2014年には労働安全衛生法の改正が予定されており、変化への対応に追われる年となるでしょう。
 職場のリスク管理を担う皆様は常に知識をアップデートし、この変化に柔軟に対応する必要があります。そして重大な決断を要する場合には第三者の意見を取り入れれば、さらに正しい判断が可能になります。その際には専門知識を有する産業医をフル活用し、正しいドアを確実に選んでいただきたいと思います。




■ 下方 征 略暦

下方 征
平成16年 名古屋市立大学医学部 卒業
平成18年 東京警察病院にて初期臨床研修を修了、以降 東京医科大学病院にて研修

 アレルギー疾患対応や有害業務リスク管理等、産業衛生を
 皮膚科専門医の立場からもサポートする。