企業の現状に即した、健康管理体制、作業管理体制、作業環境管理体制の提案から、
メンタルヘルス対策、衛生教育、新入社員教育などの教育業務を行っています。
真崎 竜邦

 近年のメンタルヘルス不調者の増加、自殺者数の高止まりの現状、そしてそれに伴って精神障害の労災認定者数が毎年増加していることから、労働安全衛生法を改正し、いわゆるストレスチェックを導入することが検討されてきました。そのこと自体には賛否両論ありますが、何度廃案になっても、再提出を繰り返している厚労省の姿勢をみると、なんらかの形で法案が通ることはほぼ確実でしょう。

 復習すると、この法案(原案)は、働き手がうつ病などのメンタルヘルス不調になることを未然に防ぐため、すべての企業、すべての労働者にストレス検査を義務づける、というものでした。
 しかし、法案を検討していた与党内から「検査結果が悪用されるおそれがある」という反対意見が出たため、産業医の選任義務のない従業員50人未満の中小企業に関しては努力義務となり、しかも大企業においても検査を受けるのは希望者のみ、と当初の壮大な目的からは大幅にトーンダウンしたうえで、今国会に法案が提出されました。
 厚労省は「働き手の多くは検査を希望するはず」として、メンタルヘルス対策としての実効性は保たれると言っているようですが、実際に、事業者の立場、労働者の立場に立って考えてみたとき、どうでしょうか。

 労働者の立場で考えてみると、日本において働く人の約66%は、従業員50人未満の中小企業で働いているわけですから、労働者の実に3分の2は今回の法案からは、(努力義務はありますが…)抜け落ちることになります。メンタルヘルスの問題に限ったことではありませんが、なぜか日本の労働衛生行政は労働者の大多数を占める中小企業に対するケアができていないのが現状です。
 次に事業者の立場で考えてみたいと思います。実施するとなれば当然、それなりのコストが発生するわけですから、50人未満の企業の大多数は「義務ではないからやらない」となるでしょう。従業員50人以上の企業では義務ですから、当然形式上の「実施」はするでしょう。ただ、検査を受けるかどうかは労働者の希望です。また、結果をうけて行われる産業医の面談も、労働者が希望した場合となっています。

 ここに、大きな二つの問題があると考えています。
企業側から見た場合、受けても受けなくてもよいストレスチェックを希望するということは、その労働者が“自社に不満を持っている異端分子ではないか”、“すでに病気になりかかっているのではないか”と考えるきっかけになります。
また、検査の結果は事業者には知らせないことになっていますが、実際には検査結果を受けて行われる産業医面談も希望者が対象となっているので、面談時間の連絡、呼び出し、また面談費用の請求などで、間接的に結果が事業者に伝わるのは避けられません。
この2点において、ストレスチェックは労働者にとって「踏み絵」になっているように思えてなりません。

 もちろんこのメンタルチェックをきっかけに、重症化する前のメンタルヘルス不調者を発見できる場合もあるでしょうから、悪いことばかりではないと思います。ただ、実施の方法に相当な注意を払わないと、それこそ、「結果が悪用される恐れがある」ということになります。

 私自身は法案の行方を注視しつつ、労働者の不利益とならないよう、かといって企業に必要以上のリスクを負わせることがないようにするためには、どう動けばよいのかを考えています。
企業の担当者には良心的なサービス提供機関、誠実な産業医を見つけていただき、取り組みを進めていただきたいと願っています。






■ 真崎 竜邦 略暦

真崎 竜邦
H11年3月 福井医科大学 医学部 医学科 卒業
以後、大阪府立病院、京都第二赤十字病院、公立丹南病院、福井大学病院、福井赤十字病院、福井県立病院 にて消化器内科医として勤務
H23年~ (財)福井県予防医学協会 にて健診・産業保健業務に従事
H24年~ アイシン・エィ・ダブリュ工業(株) 専属産業医(現職)
H25年~ まさき産業医事務所 代表 (現職)

【資格】
   ・ 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
   ・ 第2種作業環境測定士
   ・ 衛生工学衛生管理者

【コメント】
県内最大手企業にて専属産業医として、日々実務を行っています。内科医師、作業環境測定士、衛生工学衛生管理者としての知識も生かし、企業の現状に即した、健康管理体制、作業管理体制、作業環境管理体制の提案から、メンタルヘルス対策、衛生教育、新入社員教育などの教育業務を行っています。