精神科医として働く傍ら、産業医活動も精力的に取り組んでいる。 
臨床と産業医、両サイドからの経験を生かし、復職への支援、アドバイスを行っている。
佐々木 一彦

 今回は先月に引き続き、メンタルヘルスの話をさせていただこうと思います。



 企業におけるメンタルヘルス対策の重要性は、今さらお伝えする必要もないかと思います。しかし、今でも「うつ病になるのは本人の問題」と言ってはばからない雰囲気があったり、精神疾患への偏見も残っているのではないかと思われます。
 また、精神科医の産業医を社内に置けば、それですべて事足りると思っている企業も多いのではないでしょうか。しかし、それでは何の解決にもなりません。臨床における精神科医の治療と、企業における産業医の必要とされる業務はかなり異なるからです。
 うつ病になってからの治療への結びつきや、復職時の本人の状態判断による復職の可否、復職後のプログラム作成など、「治療型」のメンタルヘルスも確かに重要です。しかし、それ以上に重要と考えられるのが「予防型」のメンタルヘルスであると考えます。

 うつ病予防には、一般社員の方々のメンタルヘルスへの関心を高めるとともに、最も重要なのが、管理職の方々へのメンタルヘルスリテラシーを高めることだと考えます。
 「うつ病とは」といったうつ病のメカニズムの話や、抗うつ薬はこのようなものがありこのように使いますといった話では、おそらく実際には何の役にも立たないでしょう。会社は治療を行う場ではないからです。

 現場の管理職の方々が求めているのは、うつ病になっている社員、又は、なりかけている社員への対応法だと思われます。
 例えば、メンタルヘルスを予防する場合に業務のストレスを減らしたいと考えたとき、ただ単に仕事量を減らしてあげると良いと考えがちだが、仕事上の時間的裁量権を与えるようにする、仕事の意味が分かっていない部下に仕事の意味を理解させる、やらされ感から達成感へと導くような労務管理をする。そうすることで、仕事の量的負荷を減らすだけよりも、3倍以上のストレス緩和効果があるという研究もあるそうです。

 また、「うつ病を励ましてはいけない」ということは、現在皆さんが知っているかと思われますが、いざうつ病の部下にどのように話しをしてあげれば良いのかということで悩んでいる管理職の方も多いと思われます。このような時に「傾聴」や「共感」といったコミュニケーションスキルを伝えることで、部下への対応力も向上します。
 これらの内容は、管理職の方々も普段困っている部分に直結するため、非常に興味を持って聞いていただけます。

 社内のメンタルヘルスリテラシーを高めていくことは、社員の方々のメンタルヘルス不全を防ぐとともに、管理職の方々のストレス緩和にもつながっていきます。
 「予防型」のメンタルヘルスの重要性・必要性は今後さらに増していくことと思われます。



 御社のメンタルヘルス対策はいかがでしょうか?




■ 佐々木 一彦 略暦

佐々木 一彦
平成17年 秋田大学医学部 卒業後、坂総合病院にて研修
現在 JX日鉱日石金属株式会社、西友、他 嘱託産業医

精神科医として働く傍ら、産業医活動も精力的に取り組んでいる。
臨床と産業医、両サイドからの経験を生かし、復職への支援、アドバイスを行っている。