“こころ”と“からだ”の健康管理サービス WELD代表 松永 芳径

 花粉症の具合はいかがですか? 私は、「くしゃみ」「鼻水」「目の痒み」があり、さらに鼻や目の症状以外にも、頭重感や倦怠感がある。抗アレルギー薬を内服すると、症状は緩和されるが鼻が乾燥して頭がボーっとしてしまう…。このような状態で、仕事に支障が出ない訳はない…。

 そこで、花粉症の症状で苦しむ社員が大勢いた場合、企業の生産性にも大きな影響を与えるはずだと考え、花粉症の企業活動への影響を調べてみた。どうやら、海の向こうの米国でも花粉症は“くしゃみくらいで“と済まされる問題では無いようだ。


花粉症とアレルギー性鼻炎の経済学

 米国の調査では、花粉症の鼻炎症状である夜間の鼻づまりや鼻水は、睡眠の質を大きく低下させる。そして、日中の知的活動の生産性の低下とQOL(生活の質)の低下も報告されている。1 また、47社8267人の社員を対象に、アレルギー性鼻炎症状によるアブセンティーズム(病気欠勤による経済的損失)とプレゼンティーズム(出勤しているが疾病による生産性低下に伴う経済的損失)を計算した研究では、社員1人あたり1年間で593ドルの損失があると試算される。また、その他の疾病と比較して大きな損失であることも報告している(ストレスは518ドルの損失、偏頭痛は273ドルの損失、うつ病は269ドルの損失)2 。つまり、職場でくしゃみをし、抗アレルギー薬を内服しながらマスクをする社員の存在は、どれだけ企業の生産性に大きな経済的損失を与えるかが実感できると思う。では、抗アレルギー薬を内服する以外にどのような対策が職場でできるだろうか?

職場でできる花粉症対策
 アレルギーの原因である花粉(抗原)からの曝露を避けることが基本であり、5S活動の「清掃」をこまめに行うことが職場でもできる花粉症対策。以下、具体的に列挙した。
 1.花粉が多く落ちやすく溜まりやすい場所のこまめな掃除を行ない除去する。
(部屋の出入り口や服を脱ぎ着する更衣室やトイレは溜まりやすい。)
 2.空気清浄機を設置する。
 3.暖房器具のフィルターを掃除する。
 4.花粉の飛散が多い時間帯である午後12時以降は、窓を開けての換気は控える。
 5.各社員が職場に花粉を持ち込まない工夫として、入り口で服をはたき花粉を落とす。
 6.また、コート類は入り口で脱ぎ職場内には持ち込まない。
静電気除けスプレーを用い衣類への花粉の付着を予防する。

職場へ行くと“くしゃみ”が出るってどういうこと?
職業性アレルギー性鼻炎(Occupational Allergic Rhinitis: OAR)


 一方で、職場に出社すると鼻炎症状が出現する場合は、職業性アレルギー性鼻炎を疑う必要がある。作業上取り扱う植物や動物、化学物質が抗原となり、鼻炎症状の原因となりえる。しかし、残念ながらOARの原因として、“人”という項目は無かった。3 「くしゃみ」をすると“噂”をされていると日本では信じられているが、人が原因であればどれだけ言い訳できただろうか…。 例えば「鼻炎の原因となっている抗原は上司だ」「曝露量を減らさないといけない」と。
 話を戻して、デスクワーク中心の職場で鼻炎症状が悪化するようならば、以下のような状況が該当するか考えて欲しい。

・同じ建物内で新しくペンキで壁を塗っている。
・職場内で粉塵が発生している。もしくは、職場近隣で工事があり、粉塵が発生している。
・送風機や暖房のフィルターを、定期的に取り替えていない。
・絨毯はたまにしか掃除機をかけない。
・窓の桟に埃が溜まっている。
・隣の机に引っ越してきた同僚はペットを飼っている。
・最近、新しい観葉植物をプレゼントされた。

 上記のようなことがあればOARを疑う必要がある。化学物質や粉塵、カビやダニの死骸、動物の毛、植物の花粉はいずれもOARの原因となる。特にオフィスでは、加湿器の普及に伴い冬でも職場は高温多湿となる。ダニは越冬し、埃や絨毯は繁殖しやすい環境となる。前述と同様に、アレルギーの原因となっている抗原の曝露を避けるために、換気と掃除を行うことが重要。(観葉植物をプレゼントされたならば、私なら不用意に鼻を近づけたりはしない…。)

 最後に余談だが、英語圏では、「くしゃみ」をすると魂が抜け悪魔が口から入り込むと信じられている。そして、「くしゃみ」をした相手を気遣い“Bless you!! (神の寵愛を)”と声を掛けてあげる。花粉症で「くしゃみ」をしながら日本の企業で働く社員全員に私から“Bless you!! ”と言ってあげたい。

(引用文献)
1. Meltzer EO et al. Allergy Asthma Proc. 2009
  Sleep, quality of life, and productivity impact of nasal symptoms in the United States:
  findings from the Burden of Rhinitis in America survey.

2. Lamb CE et al .Curr Med Res Opin., 2006
  Economic impact of workplace productivity losses due to allergic rhinitis compared
  with select medical conditions in the United States from an employer perspective.
3. Dobashi K et al. Allergology International, 2014
  Japanese Guideline for occupational allergic Disease




【プロフィール】

“こころ”と“からだ”の健康管理サービス WELD代表 松永 芳径
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