産業医 原田 真吾

 

病院と在宅医療の現場で奔走している私の診ている患者さんは、70〜90歳代の方がほとんどです。その患者さんのキーパーソンとなるのは、働く世代の40〜60代の息子または娘さんです。
入院または在宅医療の初診時に、現状と今後の方向性の確認する中で、今後何かあった場合について、患者さんと御家族(息子・娘さん)と医療スタッフとお話しする機会があります。患者さん自身に何かあった場合、どうするのか?もしものときどうするか?と質問した場合、ご高齢の患者さんのほとんどが「苦しくないよう、辛くないように、自然に看取って下さい。」とお話しされます。キーパーソンとなる働く世代の御家族(息子・娘さん)は、その患者さんの価値観(人生観)や意思を聞いて驚くか、または共感するかに大体に別れます。

 

上の図では、終末期医療に関する調査で自分の場合に関しては「延命治療を望まない」が、家族の場合には「延命治療を望む」または「わからない」と回答する方が、自分の場合に比べて増加しています。本人の望む最期とは違う方向に家族が判断する可能性が高いとも考えられます。

 

上の図は平成30年度の厚生労働省調査で人生の最終段階における医療・療養についてこれまでに話し合ったことがあるものの割合ですが、一般国民の55%が「話し合ったことはない」と回答しています。また医療従事者の医師、看護師、介護職員ですら家族等と「話し合ったことがない」と回答しているのが多数存在しているのが現状です。

人生の最終段階の医療・療養について、あなたの意思に沿った医療・療養を受けるためには、ご家族等や医療介護関係者等とあらかじめ話し合い、また繰り返し話し合うこと、つまり「アドバンス・ケア・プラニング」(ACP)が重要と言われています。
これが人生会議です。この人生会議が行われていないため、患者さんと御家族との間で人生の最終段階での価値観(人生観)や意思が情報共有されていないことが問題となっています。

 元気なときから人生会議を御家族と行い、繰り返し情報を共有し、患者さんの価値観(人生観)や意思を確認し、加齢に伴う意思決定能力低下に備えて、「事前指示(アドバンスディレクティブ)・DNARDo Not Attempt Resuscitate)」を含む治療・療養の全体的なケア計画を事前に考えることが重要です。人生会議によって、患者さんの価値観(人生観)や意思を尊重し、御家族が患者さんの価値観(人生観)や意思を代理人としてサポートし、そしてそれをもとに医療者が医療行為の最適化を目指すことが重要だと考えます。

一度、大切な御家族と人生会議をやってみましょう!

 

参考文献
[1]厚生労働省 人生会議(ACP)普及・啓発リーフレット

[2]厚生労働省 これからの治療・ケアに関する話し合い

 

 

■原田 真吾 【略歴】
昭和大学医学部卒業。関東労災病院で研修後、横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学入局。現在はクローバーホスピタル病院診療部長兼医局長として地域医療に貢献しながら、複数企業で産業医活動を行っている。

資格:日本医師会認定産業医、日本在宅医療認定専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、検診マンモグラフィー読影認定医