Basical Health産業医事務所 代表 佐藤 文彦

 

 私自身は、通常の産業医の先生方とは少し経歴が異なっておりまして、3年程前までは大学病院にて糖尿病内科専門医として働いておりました。

 今回、この「健康コラム」を執筆させていただくにあたり、是非、皆さんに糖尿病内科医として知っておいていただきたい、糖尿病に関しての情報提供をさせていただきたいと思っております。 ご存じの通り、今年に入ってからも関東や九州で震度5弱の地震が発生しており、いつどこで大きな災害が起こってもおかしくない様な状況が続いております。

 

 そして、7年前の東日本大震災の時には、多くの糖尿病治療中の患者さん達が治療の継続を維持するにあたっても大変苦労された問題が、糖尿病学会等でも報告されていました。
なかでも被災地において、インスリン治療中の方が、自分がどの種類のインスリンを自己注射しているかが正確にわからず、非常に困っておられた事例も多く認められました。

 

 最近使われているインスリンの大半はペン型のタイプで、色や商品名をしっかり理解していないと、似たようなものが多くあり、正確に判別できないことがあるのが実情です。

しかも、インスリン製造メーカーも何社かあり、インスリン製剤全てが一覧になっているような「一覧表」が当時なかったために、救護に駆けつけた医療関係者も大変苦慮されたことも、問題点として浮き彫りとなりました。

 

そこで、この様な緊急時の対応が迅速に行えるように、日本糖尿病学会等が中心となって、日本で発売されているインスリン製剤が全て記載されている「インスリン製剤一覧表」を作成し、大震災の年の201110月に、無償で検索・閲覧できるようになりました。

その後、毎年のように新たなインスリン製剤が発売される毎に更新され、現在は昨年8月に最新版として、日本糖尿病学会や日本糖尿病協会のホームページの「学会からのお知らせ」からPDFをダウンロードできるようになっています。

【インスリン製剤一覧】

【日本糖尿病協会】糖尿病患者さんの災害への備え

 

現在インスリン製剤と言っても、超速攻型から持効型まで、様々なタイプのインスリン製剤が存在します。このため、異なる型のインスリン製剤を注射してしまうと、思わぬタイミングで重篤な低血糖発作を起こす可能性があり、充分に配慮することが必要です。

この一覧表には、各インスリン製造メーカーの垣根を超えて、被災者の方々がいち早く、普段使用しているインスリン製剤を確認でき、継続投与できるようにと、日本のあらゆる人達の思いが詰まって作成された一覧表だといえます。

 

もちろん、災害避難時に、自分が服用している薬やおくすり手帳も一緒に持ち出すことが理想ではありますが、実際にそれができるかどうかは全く分かりません。そういった時に、インターネット上でこういった「一覧表」を見ることができることを誰かが知っておけば、そのことによって何人もの方の助けになるかと思います。

 また、日本糖尿病学会のホームページを検索しますと、この他にも、47都道府県の糖尿業専門医を検索することができたり、「糖尿病診療ガイドライン」や「糖尿病治療ガイド」など、様々な糖尿病診療についての情報を無償で得ることもできます。

 そして、日本糖尿病協会のホームページを検索しますと、「災害時ハンドブック―災害を無事に乗り切るために―」「避難生活Q&A」といった、患者さん向けの災害時のアドバイスを、PDFで無料ダウンロードできるようにもなっています。

 

他の内科系学会のホームページでも、少なからずこの様な無料で大切な医療情報を得ることができるようになっています。

普段の産業保健の現場において、こういった様々な臨床系学会からの情報を上手に活用するために、「働く人達のために役立つよう」に日頃からチェックしておくことも、非常に大切なことではないでしょうか。

 

■佐藤 文彦【略歴】
 平成10年、順天堂大学医学部 卒業後、東京都済生会中央病院 内科臨床研修医を経て、日本赤十字社医療センター、順天堂大学医学部内科・代謝内分泌学講座 准教授、順天堂大学附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 科長 など、糖尿病の最先端分野での診療・研究を長年行っていた。日本IBM株式会社の専属産業医、健康保険組合選定議員の後、平成30年より現在の「Basical Health産業医事務所 代表」となる。

【所属学会・資格】
・日本内科学会(内科認定医)
・日本糖尿病学会(糖尿病専門医・研修指導医)
・日本肥満学会(肥満専門医)
・日本医師会認定 産業医・健康スポーツ医
・日本コーチ協会(認定メディカルコーチ)