産業医 藤城 幹山

 

風邪っぽくても社員ががんばって出勤。とその翌週、周囲の社員達にうつって、部署の大半が休みに、、、となったら大変です。「あああ、納期が!!」「シフトを今日からどう回す?」「プレゼンの代役になったけど、よくわからない(泣)」など。

健康の面でも心配ですが、業務・業績に影響するので感染症対策は職場としても重要課題の1つだと思います。

 

感染症は、いわゆるバイ菌(細菌、ウイルスなど)がうつって(感染して)おこる病気です。うつる経路はバイ菌によって違い、飛沫感染、接触感染、経口感染、空気感染、等々あげられます。

例えば、いわゆる風邪やインフルエンザは、飛沫感染と呼ばれる経路が主です。咳やクシャミで飛散した粒にバイ菌が含まれていて、それが粘膜に触れて感染します。

接触感染は、バイ菌のついている皮膚・粘膜・物などに直接触れてしまうことで感染します。例えば、“とびひ”や“はやり目”などです。

経口感染は、バイ菌の入ったものを飲食することで感染します。バイ菌が原因の食中毒がこれに当たります。

そして空気感染(飛沫核感染とも言います)ですが、バイ菌を含んだ微粒子(飛沫核)が空気中にフワフワ飛んでいて、それを吸い込むことで感染します。空気感染の困ったところは、同じ部屋にいるだけでも感染するということです。ちなみに飛沫感染と空気感染は似ている感じがしますが、飛沫感染の粒はそれなりに重いので、咳などで体から出てもすぐ地面に落ちます(2メートルくらいまで)。一方で空気感染の粒は軽いので、遠くまで飛び、しかも空気中に長時間浮遊していて、呼吸で吸い込まれて体内に入るのを待っているのです(なお、空気感染するものは飛沫感染もすると考えてください)。

 

この空気感染を起こす主な感染症は
・はしか(麻疹)
・水ぼうそう(水痘)
・結核
が挙げられます。以下で簡単に触れます。

 

■はしか(麻疹)
(麻疹については第56回の穂積先生のコラムも参照ください)

空気感染し、感染力が強く、感染するとほぼ発症して、(個々の年齢、体力、免疫状態にもよるので一概にはいえませんが)死亡(約0.1%)や後遺症も生じることもあります。

麻疹と言ったら赤いブツブツを想像しますが、実は感染力の強い時期は、発症してすぐのブツブツがまだ出ていない時期で、この時の症状は風邪とほぼ同じのため注意が必要です。

しかし、麻疹は一度かかると終生免疫と呼ばれるほどの強い免疫を得るので2度かかることはほぼありません。また、ワクチンの効果も非常に高いことが特徴です。そのため、既にかかったことがあるか、ワクチン接種済かどうかが重要です。わからない場合は母子手帳で確認したり親に聞いてみてください。それでもわからなければ対応について医療機関に受診してご相談ください。

 

■水ぼうそう(水痘)
水痘も1度かかれば2度かかることは稀で、ワクチンの効果も高いです。

ちなみに、原因のバイ菌は“水痘・帯状疱疹ウイルス”ですが、水痘にかかると以後は体内に住み続け、免疫が低下した時に増殖して帯状疱疹として再発することがあります。なお、普通の帯状疱疹は空気感染しませんが、全身に小さなプツプツが広がる汎発型と言われるタイプは空気感染します(ただし、うつされた人は水痘として発症します。帯状疱疹としては発症しません)。

 

麻疹・水痘への対策は、前述のようにかかったことがあるかの確認やワクチン接種が重要です。が、そもそも感染者が不調をおして出勤したばかりに職場に感染が拡大してしまうことは避けたいところです。感染した人は感染力のある期間は休みを取ることが、感染拡大防止の観点からも望ましいです。

しかし、麻疹、水痘は感染症法で五類感染症に指定されていますが出勤停止期間の記載はありません。職場ではなく学校に適応される学校保健安全法での出席停止期間は、麻疹では解熱した後3日を経過するまで、水痘では全ての発疹が痂皮化する(カサブタになる)までとあるので、これを参考に職場でもこの期間は感染拡大防止のためにも休むことが考えられます。この学校保健安全法の基準に準じて社内規定を設けている企業もありますが、休みのとり方とお金の問題(有給休暇を利用するのか休業補償とするのか等)についての検討は必要となるでしょう。

 

■結核
麻疹や水痘と違って結核は、死亡率(約1割。日本で年間2000人が死亡)、治療に時間がかかること(6か月以上。薬を途中で中断すると薬の効かない結核菌ができてしまうため、必ず医師が内服終了と言うまで)、予防が難しいこと(ワクチンの効果が疑問視されていること、一度かかったら終生免疫を得られるようなタイプでもないため)が非常に問題です。しかし、感染すると非常にしぶといバイ菌ですが、感染力は麻疹・水痘ほど強くありません。

 

予防が難しいため、対策としては
①感染者を早期発見して早期治療すること
②感染拡大防止対策をすること
が重要となります。

早期発見のためには、不調時の受診の指導(咳が2週間以上続く、痰・血痰、だるい、微熱が続く等の症状)、定期健康診断の履行と胸部X線で異常所見があった場合の早急な対応などあげられます。定健の胸部X線結果が結核を疑われる結果であったのに、放っておいて周囲に感染が広がり、集団感染を起こしてしまっては大変なことになります(集団感染の約1/3は事業場で発生しています)。

また、結核に限らず、咳をしていたらマスクをすることが有効です。

 

感染拡大防止の観点から結核を分けると、“うつる結核”(菌を排出している)と、“うつらない結核”に分けられますが、うつる結核の従業員がいた場合には保健所が接触者健診を行います(周囲に感染者がいないか等。実施主体は事業場でなく保健所)。

 

なお、結核は二類感染症(感染症法)であり、法令に基づき都道府県知事が就業禁止を指示します。この就業禁止となった場合、休業補償などは必要ありません(麻疹や水痘とは異なります)。

 

上記以外の病気ではノロウイルスも空気感染すると言われています。基本的には経口感染ですが、床の吐物からノロウイルス入りの粒がフワフワと飛んで、それを吸い込んで空気感染もすると言われています。ノロウイルスは食品を扱う事業の場合は特に注意が必要です。

 

健康の面からも、業務の面からも感染症対策は職場として重要な課題だと思います。

空気感染する感染症に限らず、適切に対応することでリスクを軽減できると考えられます。

最後までお読みいただきありがとうございました。職場の感染症対策の確認や見直すきっかけになれば幸いです。

 

 

■藤城 幹山   【略歴】
平成18年 東京医科大学医学部卒業。
東京大学医学部附属病院で初期研修、東京医科大学病院などでの臨床経験を経て、現在は産業医として働く人の健康、企業価値を高めることをテーマに産業医活動に従事。
日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント、メンタルヘルス法務主任者、日本皮膚科学会認定専門医