産業医科大学産業衛生教授 浜口 伝博

新年おめでとうございます。

 今年は産業医への社会の注目度が過去最高に高まる気がしています、その意味でも「おめでとうございます」の気持ちです。

その前兆は昨年にあります。ご記憶の方もいらっしゃることでしょう、平成296月労働安全衛生法が改正され産業医活動に関する次の3項目が緩和または強化されました。

1.産業医の定期巡視頻度の見直し
2.健康診断結果に基づく医師等からの意見聴取に必要となる情報の医師等への提供
3.長時間労働者に関する情報の産業医への提供

 巡視頻度は緩和されたのですが、2と3は事業者への強化となっています。これらに関する行政通達を読んでみると、巡視頻度は“産業医の意見に基づいて”が強調されており、健診後の事業者による産業医への労働者情報の提供が(有機溶剤中毒予防規則等のその他有害業務関連規則も含めて)“医師”へとなっているのに対して、長時間労働者情報については“産業医”に提供しなければならないとされています。
省令中において“医師”と“産業医”が使い分けされていますので、長時間労働後の健康管理については「産業医がしっかり見張る」ことの重要性を強調しているように読めます。そして昨年同月に出た建議にはさらにすごい内容が書かれていたので、私だけでなく多くの関係者が驚いたことと思います。

それはこの建議内容にはさらなる「産業医の権限強化」加えられていたからです。
ここで建議に書かれていた10項目すべてを解説する紙面はありませんが、第1番目に出てくる項目についてのみ触れておこうと思います。
 内容は「産業医の選任が義務づけられている事業場については、事業者が異常等の所見のあった労働者に対して、産業医等からの意見を勘案して就業上の措置を行った場合はその内容を、行わなかった場合は行わなかった旨とその理由を産業医に情報提供しなければならないこととすることが適当である。」というものです。
今まで健診後の事後措置や過重労働面接後の措置、ストレスチェック後の面接における措置など、産業医が発行する勤務変更等にかかわる指示等についてはアウトプット型(保健指導を実施する、就業制限の措置書を作成する、そしてその保健指導の効果や就業措置の結果については確認をしなくていい(責任を持たなくていい?))でよかったわけですが、これからは結果としてアウトカム(それで、結果どうなったの?)までを視野に入れざるを得ない立場になっていくということを暗示しています。


自分の指示した内容がどのように運営されたのか、されなかったのか、が産業医に報告されるということですから、結果にこだわる産業医(まるでライザップ?)が求められるという時代になることになります。
こういう構図をいやがる産業医もいるでしょうが、社会倫理の付託を受けて活動する産業医こそ、労働者の安全と健康と生命を守る責任的立場なのだという流れになってきていると積極的にとらえたいものです。
時代がますます産業医を後押ししていることは間違いありません。