産業医 整形外科 田崎 亮

 「大事な仕事の時期なのに上司が休んだ」「誰々さんが腰痛でお休み」といった話をあなたも身近で聞いたことはありませんか?「ちょっと腰が痛いくらい我慢すればいいのに」と思われる方もおりますが、実は腰痛は職場において、『4日以上の休業を要する職業性疾病』のうち、約6割を占めると言われているほど、放っておくと大変なものなのです。

腰痛はつらいですが、すぐに悪化することが少ないため、日々の忙しい仕事の中で対策を怠って、大事な時に腰痛がひどくなって休まざるを得ないという患者さんが少なからずおられるのが実情です。

そこで、今回は腰痛の種類やあなたも今すぐできる予防方法をお伝えします。

 3つの腰痛と対策
腰痛は発生してからの期間で3つに分けられます。

①発生してから1か月以内を『急性腰痛』
13か月を『亜急性腰痛』
3か月以上たったものを『慢性腰痛』

『急性腰痛』の9割は自然に治りますが、1割は治らないで慢性腰痛に移行します。それぞれの時期で対策が異なるため、しっかりと対策して慢性化させないようにしましょう。

まず、『急性腰痛』ですが、腰に炎症が起きているため安静にして痛まないようにしましょう。医療機関を受診して、消炎鎮痛剤をもらって炎症を抑えるのも手です。痛くて夜眠るのがつらい人もいるかと思います。そういう方には腰椎ベルトがお勧めです。腰椎ベルトを使用することで、腰椎の安定感が保たれ、痛みを発生させにくくすることが出来ます。安価なものでしたら薬局や通販などで一つ2000円程度から購入可能です。
続いて、『亜急性腰痛』です。この時期は慢性化するかどうかのもっとも大事な時期になります。ポイントは『過度な痛みを伴わない』『適度な運動』です。Walkingや水泳、サイクリングなど『左右対称』な運動を『過度な痛みを伴わない範囲で』行うようにしましょう。荷物を持ってのwalkingや、過度な負荷を掛けたりすると左右の対称性が崩れやすく、腰痛悪化の原因になりがちです。また、ゴルフや野球、テニスなどの腰にひねりがある運動も要注意です。正しいフォームでないと、腰痛悪化の原因になることがあります。しっかりとルールを守って運動すれば、ほとんどの腰痛は慢性化せずに対処することが出来ます。

しかし、それでも『慢性腰痛』になってしまう人が数人に一人程度の割合でいると言われています。そのような方は以下の5つのポイントを守って生活してみてください。

1. 寝る際に膝を曲げて寝るようにしましょう。
2. 運転などで同じ姿勢を1時間以上続けるのはやめましょう
  (こまめに 車から降りて腰のストレッチをしよう)
3. 物を持ち上げる際には膝を使って持ち上げましょう
  (足を伸ばしたまま、ものを持ち上げると腰椎にかかる負担は
   約三 倍です。)
4. 椅子に座る際の腰と足の角度は120°程度になるように少し
  後ろに体を倒しましょう。
   (腰の後ろにクッションを入れると後ろにもたれかかりやすいです)
5. “冷やす?暖める?”どちらでも構いません。
    どちらか気持ちのいい方を選択しましょう。

 ■生活習慣を改善して腰痛予防
 ここまで腰痛の対策をお話ししましたが、腰痛にかかってから治療するのは痛いですし、できることなら、かからないように予防した方がいいです。効果的な予防方法を5つお伝えします。

1. カルシウム(牛乳 いわし)を取って骨を丈夫にする。
2. タンパク質(豆腐 マグロ ささみ)やビタミンB6 12
   
(レバー にんにく)を取って筋肉を強化する。
3. 禁煙をして椎間板の老化を食い止める。
4. 適度な飲酒は腰に及ぼす影響はほとんどない。
  しかし、大量飲酒は姿勢が悪くなったり、血液の循環が悪くなったり
  するため、腰痛を引き起こす。
5. ダイエットして腰椎にかかる負担を減らす。体重を35%減らすだ
  けで腰痛が半減します。(BMI 25以上は危険信号)

 また、ストレスも腰痛の大きな原因の一つです。ストレスをためている人は物事をネガティブにとらえやすく、腰痛があれば、腰痛にばかり意識が向きます。そのため必要以上に痛く感じるため、『亜急性期』にも体を全く動かさずに悪化させて、更なる腰痛を引き起こす悪循環に陥りやすいです。

以上の点に気を付けて生活をすれば腰痛はよくなります。みなさんも腰痛とおさらばして少しでも生活を楽しめるようにしましょう。

 

■田崎 亮   

【略歴】
東京大学医学部出身 三楽病院にて研修後、東大整形外科医局に所属後、産業医活動を開始。働いている人の幸せをテーマに、丈夫な体と心作りを目指して産業保健、整形外科の分野からアプローチしています。
ファーストリテイリング 大同特殊鋼 フジテック等嘱託産業医