産業医大産業衛生教授 浜口 伝博

 「幸せな人たちが実践している実証済みの習慣とは」というキャッチ―な記事を見つけました。その中で紹介されているのは10個の習慣なのですが、すべてがどの程度検証されているのかはあやふやです。そこで科学的にも証明されているそのうちの3個だけを取り上げて紹介してみましょう。


 その一つ目は「余裕があること」。
日々ストレスと立ち向かい、即座の情報処理をしなければならないのがビジネスマンの毎日ですが、情報に振り回され時間に追われてばかりでは幸福を感じる暇などありません。そういう人には、アインシュタインのこの言葉が参考になります。「人生には、二つの道しかない。一つは、奇跡などまったく存在しないかのように生きること。もう一つは、すべてが奇跡であるかのように生きることだ。」。後者の生き方つまり、
今ここで自分が経験しているすべては必然であり意味がある、と積極的にとらえ価値的に理解することは確実に幸せに近づくことがわかっています。これはアウシュビッツからの生存者研究でも証明されている共通信念なのですが、このようなスタンスの人は人生の様々な局面において余裕をもって立ち止まることができ、かつポジティブなことを見つけ出せる能力を持つことにつながります。

 二つ目は「自分の体をいたわること」。
脳と体は切り離せませんから、体調が悪ければもちろん脳は不快となり気分は一向に晴れません。腹痛や頭痛、発熱や不眠の状態では幸せを感じにくいのは体感としてわかります。人間は生物ですから、生物としての自然状態を整える必要があります。十分な睡眠と適切な食事、運動がどうしても必要です。そういう意味では、生活習慣が乱れている人はすでに幸せの一部を手放してしまっていることになります。幸福は頭だけでなく全身で味わう方がより重厚です。

 三つめは「人間関係を築くこと」。
人との交流を大切にして互いに信頼感を高め合うことが幸せには必須要素です。快楽や満足は一人でも味わうことができますが、幸せは一人だけでは成立しにくいのです。社会や人との支え合いの中でやりがいや生きがいを感じで、自分の生きることの意味や役割を見出すことができます。
人との交流で大切なことはどんな言葉を使うかです。人は言葉を使って考えを構築し行動を開始します。

例えばこんな具合、「世の中に運のいい人と悪い人がいるのではない。運がいいと思っている人と運が悪いと思っている人がいるに過ぎない。リチャード・ワイズマン(イギリスの心理学者)」。どうか今年も前向きで!